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2006年07月20日 - 特集

〔特集〕国連安保理決議1695の評価――日本国の外交力は33点

話題の対北朝鮮安保理決議の正確・完全な翻訳が遂に刊行!

sres1695_bs.jpg 国際連合安全保障理事会決議1695
日本語訳(全訳)

および
英語・フランス語・中国語・ロシア語正文


欧州経済新聞編集部(編訳)

2006年7月5日に行われた北朝鮮のミサイル発射に対して、同15日に、国際連合安全保障理事会は、非難決議が採択された。

ミサイル発射後、非難決議が採択されるまでの間に、本紙においては、「北朝鮮のミサイル発射――国際連合法にもとづく解説」という緊急特集を組み、北朝鮮のミサイル発射に関して、とくに国連法に基いた解説を行い、日本政府がいかなる外交的努力を行う必要があるかを論じた。

この論考においてはさまざまな結論を示すことができたが、安全保障理事会決議に絞って言えば

  1. 形式については、(議長声明ではなく)決議(resolution)でなければ法的な意味がないこと
  2. 決議においては、「平和に対する脅威(threat to peace)」であると決定される必要があること
  3. 決議において、関係国の自衛権を確認することが重要であること

の3点を述べた。

前回の記事を執筆した時点では、議長声明に固執していた中露が遂に折れ、決議とすることに妥協することが確定的となった情勢であったため、日本外交の努力を称賛した。なぜなら、日本政府は、上記3点のうち、1点目について、日本国が主張すべき内容を主張し、かつ、それを貫徹したからである。

日本国が安保理において決議を採択するようイニシアティヴをとりつつ交渉を行う姿に、頼もしさすら覚え、我が国の外交も成長したものだと感じたものである。そして、期待をかけて、前記特集においてもエールを送った。

しかしながら、実際に決議がなされ、その内容を検討してみると、まったく期待はずれの内容に愕然とした。日本政府の外交力についても、まったくその評価を変えなければならなくなった。なぜなら、2点目と3点目がまったく実現されていない決議だったからである。

確かに、1点目の文書形式については、達成できたことは評価できる。しかし、全体としてみると、3点中の1点が達成されたにすぎない。しかも、内容については、まったく達成されなかったということでもある。

つまり、3点中の1点ということだから、100点満点で採点するなら、33点ということになろう。内容的には0点とすらいいうる。

このような見地から、本稿においては、以下、今後の日本政府の外交力の発展を願いつつ、前記緊急特集で得られた見地から、北朝鮮に対する非難決議である国連安保理決議1695を分析していく。

本稿の目的は、あくまで前記緊急特集で得られた見地から当該決議を評価することであり、その他の点はあえてそぎ落とすことにした。なぜなら、外交のような交渉ごとにおいては、肝心な点でいかに妥協を引き出すかが重要なのであって、余り重要ではない点で相手から妥協をいくらたくさん引き出しても、肝心な一点で妥協を引き出せなければ、まったく意味がないからである。

国連安保理決議1695の分析

まず、2点目の「平和に対する脅威(threat to peace)」についてであるが、前記緊急特集においては、国連憲章39条の:

安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第 41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。(The Security Council shall determine the existence of any threat to the peace, breach of the peace, or act of aggression and shall make recommendations, or decide what measures shall be taken in accordance with Articles 41 and 42, to maintain or restore international peace and security.)

という規定に基き、今回の事件が「平和に対する脅威(threat to peace)」であるとの決定が決議の中で行われる必要があることを述べた。

確かに、決議には、「核兵器、化学兵器及び生物兵器並びにその発射手段の拡散が国際的な平和及び安全への脅威を構成することを再確認し」という文言が含まれてはいる。

しかし、この言い回しは、この決議でも言及された1993年の安保理決議825や、2004年の安保理決議1540においてもまったく同じ形で用いられている。

安保理決議825がついに完訳!北朝鮮情勢を読むのに不可欠な資料

sres825b.jpg 国際連合安全保障理事会決議825
日本語訳(全訳)

および
英語・フランス語正文


欧州経済新聞編集部(編訳)

したがって、この文言については、ほとんど意味はないものと解さざるを得ない。少なくとも、今回の決議において何か新しいものが付け加わったわけではなく、単にそれまでの文書と同じ内容を繰り返しているに過ぎない。したがって、前述の文言が国連憲章39条の「平和に対する脅威の存在の決定」であるということは困難である。

さらに、この文言が置かれているのは、本文ではなく前文である。一般に、前文というのは、どちらかというと政治的な意味合いの強い文章であり、法的な意味は、本文に較べて薄いといわれている。とくに、安保理決議においては、英文の場合、前文においてはいわゆる現在分詞が用いられるのに対し、本文においては定動詞(言い切りの形)が用いられるので、このニュアンスの違いがかなりはっきりと出る。

したがって、この観点からも、前述の文言が国連憲章39条の「平和に対する脅威の存在の決定」であるということは困難である。

さらに、文言の言い回し自体も、単なる一般論の形式を取っている。もっとも、一般論の形式をとって個別の事件のことを述べることもないわけではないが、以上のコンテクストからすれば、安保理が今回の事件を「平和に対する脅威」であると決定しているとは解することができない。

したがって、当該文言は、憲章39条のいう「平和に対する脅威の存在の決定」ではないものと解される。

報道によれば、日本政府は、この文言を決議に挿入することをしっかりと主張していた。にもかかわらず、これが挿入されなかったということは、要するに、日本政府の交渉が失敗したということである。

次に、3点目の自衛権の確認についてであるが、これについては、報道を見る限り、日本政府が主張していたという形跡すらない。もちろん、できあがった決議を見ても、その形跡はまったく確認できない。

ということは、日本政府は自衛権を確認する文言を挿入するように主張をしていなかったということであり、要するに、すべき主張をしていなかったということであるから、2点目よりもさらに始末が悪い。

結局、1点目クリア、2点目失敗、3点目論外ということで、100点中33点、つまり落第点と評価せざるを得ない。

日本政府の外交力が向上し、次回はよりよい結果を残せることを期待したい。

話題の対北朝鮮安保理決議の正確・完全な翻訳が遂に刊行!

sres1695_bs.jpg 国際連合安全保障理事会決議1695
日本語訳(全訳)

および
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欧州経済新聞編集部(編訳)

(了)
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