2006年10月09日

〔社説〕「法の適用に関する通則法」への不感症――国際感覚の欠如した日本メディア

海外で家族生活やビジネスを展開されている方々に馴染み深い法律の一つに、「法例」があります。ご存知のように、法例という法律は、明治31年(1898年)以来、わが国の国際私法の基本法典となっておりましたが、制定以来、片仮名・文語体で書かれており、句読点もなく、たいへん読みにくい法律となっておりました。また、特に財産法部分に関しては制定以来一度も改正がなく、インターネットの登場など、今日の多様化したビジネスの要請に耐えうる法律改正が求められていました。

そこで、いわゆる法例の「現代化」の作業が進められておりましたが、晴れて、今年6月に国会で法例の全面改正法案が可決され、新たに「法の適用に関する通則法」として成立しました。施行は来年1月1日からとのことです。

新法は平仮名・口語体で書かれており、たいへん読みやすい法律となっております。内容的にも、諸国の立法状況や近時の学説などを斟酌し、ビジネスの要請にもかなりの程度耐えうるものとなっています。したがって、このこと自体は、在外邦人にとって、大変喜ばしいことといえます。

しかし、おかしなことに、どういう訳か、日本のメディアからはこの重要な法改正はほとんど注目を受けておらず、半ば放置ないし無視のような扱いを受けているようです。今回、問題とするのはこの点です。

そもそも、国際私法という分野は、国際取引・多国籍企業・国際結婚・国際相続といった国際的な法律問題を一手に引き受ける法分野であり、それゆえ、今回の法改正についても、海外でビジネスや家族生活を営まれる方々にとっては、死活問題ともなりうる法改正であったわけです。重要度からいえば、最近の民法全面改正や会社法全面改正に匹敵する重要度をもつ法改正であったはずですが、なぜこのような扱いを受けているのか、理解に苦しみます。

そこで、その理由について考えてみると、やはり、日本のメディアにおける国際感覚の欠如が疑われます。

確かに、日本のメディアは主として日本国内の読者を対象としており、したがって、基本的に国内のニュースに偏重するのは理解できます(だからこそ、海外のニュースを中心とする弊紙のようなメディアに存在意義があるわけです)。しかし、今回の場合は、そもそも日本の法律の話であるわけですし、海外のみならず日本国内にも大きな影響を及ぼすような法律改正(日本国内にも多くの外国人が居住する)であるわけですから、まずもって日本のメディアが責任を持って報道すべき事柄であると思われます。

また、不法行為における生産物責任の特例や、消費者法・労働法の特別連結規定が設けられたことなど、日本企業の海外展開にも大いに関係してくることですから、これを報道しなくてよいと判断したとしたら、それは余程国際感覚が欠如していると判断せざるを得ません。

そもそも、日本という国は明治以来基本的に貿易立国であり、繊維製品をはじめとした貿易が成功したからこそ、わが国は不平等条約を改正し、列強入りを果たすことができたわけです。第二次世界大戦後は、わが国の輸出の中心は工業製品に移りましたが、現在においても、日本企業が世界的に展開することによりわが国の富は生まれているという事実には変わりがありません。この事実を、日本のメディアは直視すべきでしょう。

以下、法の適用に関する通則法に関する資料を掲げておきます。ご参考になれば幸いです。

衆議院法務委員会の中継では、二人の専門家が改正法について解説している動画をみることができます。

(了)